ところで、戦後60年を経過し、関係者の高齢化が進み、各団体とも運動を集結しようという気運が生じ、かつまた独立行政法人平和祈念事業特別基金も、行革の観点からそろそろ廃止を図るべきではないかという意見も出てきたので、関係団体、議連と党及び政府の間で数次にわたり折衝が繰り返された結果、平成15年12月19日、自民党三役により、左記のとおり「旧ソ連等抑留者問題・恩給欠格者問題・引揚者問題の解決策について」が決定され、関係大臣等の確認を得ることとなった。
旧ソ連等留者問題・恩給欠格者問題・引揚者問題の解決策について
これらのいわゆる戦後処理問題については、幾多の変遷を経ながら、長きにわたってその根本的な解決が強く求められてきた。
新しい世紀を迎え、かつ、当事者の方々がすでに平均年齢82歳というきわめて高齢に達した今日、我が党としても本問題の解決を最早これ以上先送りすることは許されない。
よって、ここに、我が党は、思い切って左記の措置を講じ、長年の懸案の決着を図ろうとの方針を決定した。
ついては、政府においては、この方針に即して、平成16年度において法律改正を含め所要の措置を講ずるよう強く要請する。
記
一、旧ソ連等抑留者に係る措置
(一)旧ソ連等抑留者であって現に生存しているものに、慰労金として一人20万円を支給する。支給期間は平成16年度より同20年度までの5年間とする。
(二)中央慰霊碑を建設する。
(三)慰霊祭・語り継ぐ集い等の開催への資金を支出する。
二、恩給欠格者に係る措置
平和祈念事業特別基金(以下「基金」と略称する。)の慰籍事業による書状等の贈呈を受けた恩恵欠格者であって現に生存しているものに、慰労金として一人10万円を支給する。支給期間は、平成16年度より同20年度までの5年間とする。
三、引揚者に係る措置
(一)基金による書状の贈呈を受けた引揚者出会って現に生存しているものに、銀杯を贈呈する。贈呈期間は、平成16年より同20年度までの5年間とする。
(二)引揚者の象徴的な施設として「慰霊碑」を建立する。
四、基金の取り崩しと解散
右一から三までの措置は、基金への出資金400億円を逐次取り崩して実施するものとし、その措置の修了に伴い、基金は平成20年度末をもって解散し、残余の財産は国庫に納付するものとする。
平成15年12月19日
自由民主党幹事長 安倍 晋太郎
自由民主党総務会長 堀内 光雄
自由民主党政調会長 額賀 福志郎
自由民主党参議院議員会長 竹山 裕
自由民主党参議院幹事長 青木 幹雄
旧ソ連等留者問題・恩給欠格者問題・引揚者問題の最終決着について
これらのいわゆる戦後処理問題については、去る20日自由民主党幹事長、総務会長及び政務調査会長並びに参議院議員会長及び幹事長の党五役より政府に対して要請した方針に沿って、その解決を図り、これをもって長きにわたって懸案とされてきた本問題の最終決着とすることを確認する。
平成15年12月22日
総務大臣 麻生 太郎
財務大臣 谷垣 禎一
自由民主党政務調査会長 額賀 福志郎
公明党政務調査会長 北側 一雄
ところが、この解決策は実行されないまま、もち越され、かつ400億円の基金の全額を財源として取り崩すことは困難として、その2分の1の金額をもって3団体の要望に応えることとなり、平成17年8月4日、次のような政府・与党関係者間の了解事項が成立した。
了解事項
一 今年は戦後60年を迎える節目の年に当たり、また戦後処理三問題を抱える関係者も高齢化が進展していること等にかんがみ、この問題に終止符を打つこととし、そのための特別記念事業を行う。
二 特別記念事業は、200億円を目途に実施することとし、その財源は、独立行政法人平和祈念事業特別基金(以下「基金」という)の資産(資本金)をもって充てる(事業内容の基準は、別紙を参考とする)。
三 基金が現在行っている書状等贈呈事業は、特別記念事業開始までに終了する。
四 特別記念事業の終了後、資料等を記録・保存することとし、その方法については、別途検討する。また、戦後強制抑留に係る慰霊等の事業については、引き続き実施する。
(五、六略)
七 特別記念事業の終了後、基金は廃止する。
八 右一から七について所要の法律案を今通常国会に提出する。
九 以上の措置により、戦後処理問題に関する措置はすべて確定・終了したものとする。
平成17年8月4日
自由民主党幹事長 武部 勤
自由民主党総務会長 久間 幸生
自由民主党政務調査会長 与謝野 馨
自由民主党参議院議員会長 青木 幹雄
自由民主党参議院幹事長 片山 虎之助
公明党幹事長 冬柴 鐵三
公明党政務調査会長 井上 義久
公明党参議院会長 草川 昭三
内閣官房長官 細田 博之
総務大臣 麻生 太郎
財務大臣 谷垣 禎一
われわれ全抑協としては、この了解事項はけっして満足べきものではなかったが、抑留者の高齢化が進むなかで、早期に決着を図る必要がある等の事情があり、了承することとしたので、事業は進行している。
ただし、中央慰霊碑は千鳥ケ渕戦没者墓苑内に建立することに決定したが、抑留資料の収容、展示する施設の設置等については、なお検討中で早期に決着を図りたいと考えている。