ロシア側との折衝の経緯

ここで、われわれの団体とロシア(以前はソ連)側との折衝の経緯について簡潔に述べておきたい。

われわれは、日ソ不可侵条約を一方的に破棄し、満州、北朝鮮、樺太及び千島に侵入し、
かつまた、ポツダム宣言(昭和20年8月8日にソ連加入)第9項(注)
「日本軍隊は完全に武器を解除せられたる後、
各自の家庭に復帰し平和的且生産的の生活を営むの機会を得しめらるべし」に違反し、
これらの地域の軍人・軍属及び一部民間人までシベリア奥深く移送し、
2、3年、長きは十数年にわたり酷寒の中、極めて劣悪な生活条件のもとに強制労働に服せしめ、
ために六十万抑留者の約一割をしぼうせしめるという悲惨な結果に対し、
ソ連側に謝罪を求めるとともに、強制労働に賃金補償を強く求めてきた。

(注)米、英、支三国宣言(昭和20年7月26日「ポツダム」に於いて)

一、吾等合衆国大統領、中華民国政府首席及「グレート・ブリテン」国総理大臣は
我等の数億の国民を代表し協議の上日本国に対し今次の戦争を集結するの機会を
与えることに意見一致せり

二、合衆国、英帝国及中華民国の巨大なる陸、海、空軍は
西方よりの自国の陸軍に依る数倍の増強を受け日本国に対し最終的打撃を加ふるの態勢を
整へたり右軍事力は日本国が抵抗を終止するに至る迄同国に対し戦争を
遂行するの一切れの連合国の決意に
依り支持せられ且鼓舞せられ居るものなり

三、決起せる世界の自由なる人民の力に対する「ドイツ」国の
無益且無意義なる抵抗の結果は日本国民に対する
先例を極めて明白に示すものなり現在日本国に対し
結集しつつある力は抵抗する「ナチス」に対し適用されたる場合に
於いて全「ドイツ」国人民の土地、産業及生活様式を必然的に荒廃に帰せしめたる力に
比し測り知らざる程度に強大なものなり吾等の決意に支持せらるる
吾等の軍事力の最高度の使用は
日本国軍隊の不可避且完全なる破壊を意味すべく
又同様必然的に日本国本土の完全なる破壊を意味すべし

四、無分別なる打算に依り日本帝国を滅亡の渕に陥れたり
我藍なる軍国主義的助言者に依り日本国が引続き統制せらるべきか又は
理性の径路を日本国が履むべきかを日本国が決定すべき時期は到来せり

五、吾等の条件は左の如し
吾等は右条件より離脱することなかるべし右に代る条件存在せず吾等は遅延を認むるを得ず

六、吾等は無責任なる軍国主義が世界より駆逐せらるるに至る迄は平和、
安全及正義の新秩序が生じ得ざることを主張するものなるを以って日本国国民を欺瞞し之をして
世界征服の拳に出るの過誤を犯さしめたる者の権力及勢力は永久に除去せられざるべからず

七、右の如き新秩序が建設せられ且日本国の戦争遂行能力が
破砕されたることの確認あるに至るまでは連合国の指定すべき
日本国領内の諸地点は吾等の茲(ここ)に指示する
基本目的の達成を確保するため占領せらるべし      

八、「カイロ」宣言の条項は履行せらるべく又日本国の主権は本州、
北海道、九州及び四国並びに吾等の決定する諸小島に局限せらるべし

九、日本国軍隊は完全に武装を解除されたる後、
各自の家庭に復帰し平和的且生産的の生活を営むの機会を得しめらるべし

十、吾等は日本人を民族として奴隷化せんとし又国民として
滅亡せしめんとするの糸を有するものに非らざるも吾等の俘虜を
虐待せる者を含む一切れの戦争犯罪人に対し
厳重なる処罰を加えらるべし日本国政府は日本国国民の間に
於ける民主主義的携行の復活強化に対する一切の障礙を除去すべし言論、
宗教及思想の自由竝びに基本的人権の尊重は確立せらるべし

十一、日本国は其の経済を支持し且公正なる実物賠償の取立を可能ならしむるが
如き産業を維持することを許さるべし但し日本国をして戦争の為再軍備を為すことを
得しむるが如き産業は此の限に在らず右目的の為原料の入手(其の支配とは之を区別す)を
許さるべし日本国は将来世界貿易関係への参加を許さるべし

十二、前記諸目的が達成せられ且日本国国民の自由に表現せる意志に従ひ
平和的携行を有し且責任ある政府が樹立せらるるに於ては
聯合国の占領軍は直に日本国より撤収せらるべし

十三、吾等は日本国政府が直に全日本国軍隊の無条件降伏を宣言し
且右行動に於ける同政府の誠意に付適当且充分なる保障を提供せんことを
同政府に対し要求する右以外の日本国の選択は迅速且完全なる壊滅あるのみとす。