埋葬
悲しくも斃れた戦友の埋葬も一度ソ連兵の許可を得なければならない。しかもきびしいロシアの気温は我らの想像外で、零下30〜40度で凍結した大地 は、ツルハシ如きものでいくら力をこめてもカチンと反応するばかり。焚き火で大地を温めるも10センチの穴も掘れない固さである。燃やす木材も少なく僅か に低くなった穴(?)に戦友の真っ裸の屍体を横たえる。その上に僅かの土砂と雪をかけるばかりである。木端の墓標を立て、中味のない飯盒に少量の水をいれ 埋葬の形式をとるばかりで只々空しさを覚える。
昭和20年12月頃