110-111. 埋葬

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埋葬

悲しくも斃れた戦友の埋葬も一度ソ連兵の許可を得なければならない。しかもきびしいロシアの気温は我らの想像外で、零下30〜40度で凍結した大地 は、ツルハシ如きものでいくら力をこめてもカチンと反応するばかり。焚火で大地を暖めるも10センチの穴も掘れない固さである。燃やす木材も少なく僅かに 低くなった穴に戦友の真っ裸の死体を横たえる。その上に僅かの土砂と雪をかけるばかりである。木端で墓標を立て、中味のない飯盒に少量の水をいれ埋葬の形 式をとるばかりで只々空しさを覚える。

昭和21年1月