120-121. 幻

120121

水、一滴も口に入れられない日が幾日も続き、天幕の外から「食料を運搬する橇の音が聞こえる」と叫ぶ声あり。天幕の外に這い出てみれば、暗い吹雪だけで何も目に入らなかった。動いただけで、さらに空腹の苦しみが増した。

昭和21年1月初