14-15. 耐寒演習

training in freezing weather

耐寒演習

1月頃の満州は実に寒い。きびしい零下60度の中では全てのものが凍結する時季である。その中でも猛吹雪の最中に実施された耐寒演習は死の行軍であった。

弾薬班が戦闘で糧秣班が続く輜重隊の演習は想像するだに苦しいもので、指揮官が先頭にたち手信号で左折、右折と合図するが、吹雪のために後方には手 信号なんかは全く見えない。前馬の進むに従ってゆくより方法がない。吹雪のために手綱をしめる手先が狂う。左折のつもりが右折になりかける。馬も苦しかろ う人間とちがって言葉がでない。馬も立ち止まる。叱咤するも幣紙の思うようには動いてくれない時もある。それに寒さがひどいので兵士が声をだしても風のた めにその声も吹きとばされてしまうのだ。言語に絶するとの紋切り型のことばなどこの演習では通用しなかった。全くひどい耐寒演習だった。

昭和20 年1月