168-169: 人民裁判 - 吊し上げ

168.169

人民裁判 - 吊し上げ

ウオロシロフでは民主運動が仲々盛大に行われた。右翼的なというよりスターリン主義に賛同しない人をスパイを使い撰りだして大衆の前で人民裁判を実施する。罪状により軽度の物は尻叩き、頭から幾杯かバケツで水をブッかける。重罪は絶食を宣告されるので叶わない。狡猾なソ連政治部将校は遠くよりこれを眺めてニンマリと笑うばかりで止めようとはしない。

情けないが日本人アクチーブ連中はソ連指導者に媚を売ることにより、自己中心の生活環境の良好を希うばかり。エゴイストの極端さに私らは眼をおおうばかりで、日本人アクチーブ同士でも勢力争いをなし、只自分一人が他人より厚遇されるのを願うばかりで、いつの日か我が身が反動として追放されるかもしれない不安定な身をしらず、いばりちらす有様は彼等のさもしい魂胆の現れであるのを眺めると、私は寂しい気持ちになるばかり。

昭和21年5月初