172-173: 赤鬼の朝

172.173

赤鬼の朝

未明の作業出発。周りは暗い。その中で警備隊委員が書類をめくりながら人員の計算が始まる。算数ができないソ連兵のやることは予想以上に手間どり時間が空費させられる。

通称アダ名が赤鬼と呼ばれる警備隊員がいた。彼はそんなとき時間つぶしのためか病弱者を突き飛ばし、蹴りあげたり暴力をふるうのを楽しんでいる。嫌 らしい少し赤ら顔の顔は忘れられない。我々は恐ろしくはないが蹴られたり、つきとばされるのが口惜しくて仕方がない。21年入ソの7月頃のことだった。

昭和21年7月