帰国(舞鶴港) 国敗れて山河有り。 城春にして草木探し。 矢張、祖国は美しかった。 温かい祖国であった。ソ連抑留中、ソ連軍から叩き込まれてきた、みじめな祖国ではなかった。人は平和に働き、舞鶴の海は夏の陽差しを受け、力強くキラキラ輝いていた。あたかも祖国復興のエネルギーを見せるかのように。 帰還した私達の眼に、生きていることへの実感と、これからの希いとがこめられて、涙を浮かべながら「よかったな」と肩をたたきあった。 22年7月16日