あとがき

あとがき

この画集を出版するにあたっては、多くの人たちにご協力いただきました。

特に、舞鶴引揚記念館ならびに「引揚を記念する舞鶴全国友の会」に大変お世話になりました。また、シベリアを語る会の故中澤寅次郎氏に、泊り込みで解説文等の労をわずらわしました。さらに、新しいメンバーの方々にもお世話になりました。

シベリア抑留を体験された人たちにも高齢化の波は押し寄せています。あの戦争から既に半世紀近くなるのですからムリもありません。しかしそれだけに、おぞましい苦難の日々を風化させてはならないとの思いがつのります。

これまでに数百枚の絵を描いてきましたが、これからも私の生涯をかけてキャンバスと向き合っていくつもりです。そうすることが、戦友に対する鎮魂への責務であり、生かされた者の使命と思うからです。

平成4年秋から5年にかけてのロシアにおける展覧会は、まさに夢のような出来事でした。開催そのものがドキュメントで、私は命がけで出かけました。 最初の開催地ウラジオストクへは宇野元首相や現地の知事も出席され、マスコミも大きく報道してくれました。日本では考えられない美術館での大規模な展覧 会、押し寄せる見学者に私は目を見はるばかりでした。最後の開催地コムソモリスク ナ アムーレ美術館での記者会見は、緊迫したものでした。「ロシア人が こんな残酷なことを他国民にするはずがない」とか「これは我々を告発する絵だ」と非難する人もありましたが、「この絵は、戦争の怨念を超越した美術的な作 品としてとらえるべきだ」と発言してくれた美術家同盟コロレンコ氏の言葉は、嬉しく思いました。

またロシア展後、平和記念事業特別基金と(財)全国強制抑留者協会の主催で、国内5カ所での巡回展に展示していただきました。

これらの展覧会開催に努力して下さった多くの方々に深く感謝いたします。お一人ずつお名前を記すべきですが、ここへ書き切れないほどたくさんの方にお世話になりました。どなた様も、本当にありがとうございます。

ここに謹んでお礼を申し上げます。

平成6年1月吉日

吉田勇