幻覚 飢えと寒さで、栄養失調になっていた松本一等兵(大阪府吹田出身)は、空の食缶の中に食べ物が入っている幻覚にとらわれて、一日中カランカランとかきまわしていた。やがて、その音もか細く、力弱くなり、遂には静寂になった時には、力つきて、彼は絶命していたのである。 我々は、明日はわが身かと思い、絶望におびえたのである。 昭和21年1月末頃